イベントにおける列管理

当時読んで印象的だった記事↓から行列の管理について考える。

先着順で整理券を配るとその整理券を求めて徹夜する人が出てきてしまい、そうならないように対応を警察から求められたときの列のさばき方について書いてある。

詳しくは記事を参照してもらうとして、以下が印象的だった。

「行列管理やイベントで最も重要なことは、単純でわかりやすいルールを視覚的に内容的にも明確に発信すること」

人間の心理的にも順番をシビアに守りたいのは100番程度までということが経験でわかりました。

いくら完成度の高いルールでも参加者が理解できない、もしくは参加者同士で共有できていなければ何の意味もなさないのです。

徹夜で並ぶという、“集団になったときに周囲への影響が大きく出てしまうが自分一人が抜けただけでは解決しない問題”に対して、共有しやすい・わかりやすいルールを周知して、守るものを明確にすることで対応する。ルールの厳密さより守りやすさを優先して考えているのが現場の知という感じがあってとても良い。

管理が崩壊する流れとして、いくつか店舗やイベントでの例が提示されている。

数に押し切られた店舗側の人間は、相手のルール違反を容認した上で、さらに自分たちの不備さえ認めさせられる事態に陥ります。最悪の場合、ルールを守った人間すら敵に回してしまいます。

もらえなかった人間が一斉に運営側の準備不足を声高に叫び始めたことでルールと正義が逆転します。*1

徹夜を禁止していたにもかかわらず、徹夜で並んだ人間達から優先してしかも時間を繰上げてまで販売を開始してしまったのです。
当然ルールを守った人間からは不満が噴出。その数があまりにも圧倒的だったため現場はパニック状態となり、そこに加えて警察からの中止命令。*2

ルールを守っていない人も自分の行動を当たり前に正当化する、それを認めてしまうとルールを守っていた人たちまでも運営の敵になってしまい収集がつかなくなる、という流れはどの例にも当てはまりそう。

 

かなり古い(2012年)が、東京駅でのプロジェクションマッピングイベントでの例。

当初の予定を30分繰り上げて開始したが、このイベントのために用意された観客席では収容することができず、隣接するビルや道路にも人があふれたため、危険と判断とした警察側から主催者に対して中止を勧告。2回目の上映が終了した時点で中止となった。

前日に地上波で紹介されたこともあり人が殺到。事前の来場予想が甘かったのか警察から中止を勧告されてしまった。

このイベントは同年12月にも行われており、12月21日から28日にかけてプロジェクションマッピングする予定だったが、24日以降は中止している。23日も初回のみでそれ以降は中止になっていた。

当時のツイートからも分かる通り、駅構内もかなりの混雑になってしまっていることが分かる。

東京駅のイベントは、なぜかこの2回の失敗の反省を活かせておらず、2014年の東京駅開業100年を記念したSuicaの販売でもやらかしている。

JR東は、記念Suicaの発売を知らせるポスターに「前日から列にお並び頂くことはできません」と告知しましたが、実際は徹夜組も多くいました。20日未明には希望者が約1500人に急増。JR東東京支社の広報担当者は「収拾がつかず、(列に並ぶのを)断れるような状況ではなかった」と話しています。

まさに冒頭の記事で触れられたアンチパターンの通りになってしまっている。

 

こういったトラブルは規模はさまざまではあるが起きている。

これは2015年の例↑。来場予想の見誤りとイベント運営の経験不足が指摘されている。東京駅の限定Suicaもそうだが、こういった限定アイテムは並ぶコストを度外視する人が多く、当日のさばきで対応するのはそもそも無理がありそう。

 

コロナ禍を経てこちらは2022年の例↓。

実際に現地に行った様子がレポートされていて、再発防止策まで提案されていて読み応えのある記事になっている。

限定アイテムの配布数、条件、その時点での状況の共有がうまくされておらず、状況が分からないユーザーが押し寄せてしまい、対応が後手後手に回ってしまっている。さらには警察への事前共有もされていない様子で、運営が混乱していたことが分かる。

 


 

偏ったサンプリングではあるが、見る限り「限定アイテムの先着順での販売(配布)」は都市部では成立しないと思った方が良さそう。そもそも並ぶための場所が少なく、交通量も多い場所だと事故の危険も高まる。警備したところで人が多すぎるとはけてもらう場所がないような状態になってしまう。コロナのこともあるし、基本的には事前予約や抽選が必須になるだろう。

中止されたイベントについて悪く書いているが、中止程度で済めば事前に危険を回避している点で良いとも言える。判断が遅くなり混雑が過ぎると事故が起こっていまう。日本*3や韓国*4でも痛ましい事件があったが、それについてはまた別途考えることにする。

群衆をコントロールするシステムの構築は、相応の繊細さと胆力の必要な作業だ。上手にやっているところ含めて今後も事例があれば集めたい。

 

*1:「某ソーシャルゲームのイベント」とあり、おそらく後述するモンストの件

*2:「某駅100周年イベント」とあり、おそらく後述する東京駅開業100年を記念したSuicaの販売の件

*3:明石花火大会歩道橋事故 - Wikipedia

*4:ソウル梨泰院雑踏事故 - Wikipedia