UIとその運用[食券機の場合]

実装されたUIの運用方法についての事例。

togetter.com

道の駅にある食券機に関するもので、まとめ内のポストに面白いものがあった。

改めて食券機のメリットを考えると、

  • 先払いかつ自動精算なので釣り銭間違い、払い忘れなどのトラブルを防ぐことができる。
  • 席の確保とメニュー選択のフローを分けることができるので、入店時の席までの案内を省略することができる。
  • 単純に省人化できる

といったところがあるだろうか。

逆にデメリットといえば行列の問題だろう。券売機は基本的に大量に用意できないので、1つの券売機に多くの人が並ぶことになる。メニューを選ぶ、決済する、というそれぞれに多く時間がかかる工程が、食券機の前にいないとできないことで一人の操作が終わるまでに多くの時間がかかる。

先述の「1.5倍パネル」は、あらかじめ操作のシミュレーションさせることで時短することに成功している。ボタン配列通りになっているところが認知しやすさにつながっている。

メニュー数が少ないからこその対応ではあるし、食券機は自動販売機と同じで、「1.お金を入れて」から「2.メニューを選び」、「3.そのメニューのボタンを押す」という操作の順序があらかじめ客側が知っていることも、シンプルにガイドできることにつながってはいるだろう。

 


 

券売機は生活の中で接する頻度の高いUIだからなのか、使いづらさに関する嘆きに関しては枚挙に暇がない。

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見て分かる通り問題は様々あるが、面白いのが「モバイルオーダーの方が使いやすい」という意見があること。

スマートフォンの画面の10倍以上はあろうかという広さの端末なのになぜ使いにくくなるのか、デザインに関わる者として気になるがまた次の機会に置いておくことにする。

 


 

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どのように使いやすくするかということは、ユーザーは見たいものしか見ない、という点で上記のような事例が参考になりそうではある。

マスクによるルールの見える化

マスクの色を変えることで、退勤直前の看護師が指示を受けしまい仕方なく残業する、といったことを減らせた事例。

www.yomiuri.co.jp

制服による色分けではコストがかかるところを、別の色のマスクで対応することで費用をかけずにオペレーションに組み込むことができた。

 

www.sankei.com

同じ取り組みに関する別の記事では、

「昨年と比較するとベッド稼働率の低下もあり、すべてがマスク2色制の効果とは言い切れない」(広瀬看護部長)といい、詳しい要因分析が必要というが、全病棟で看護師の残業時間が減少しており、効果は確実にあったといえる。

とあり、マスクだけで絶大な効果があったかは微妙なところではある。

 

www.medius.co.jp

ユニフォームでの取り組みの事例でも、

ユニフォームの色を変えただけで業務が減るわけではなく、看護師の急な欠勤、患者さんの急変や緊急入院など業務が急に過多になることにも備えが必要です。

とあり、実際はルールが明確になる、という点だけで残業が減らせるわけではない。

 

ただ、マスクの取り組みはユニフォームに比べて、コスト負担の意味でアイデアが優れているというキャッチーさがあると感じた。

キャッチーなアイデアは試してみたくなるし、ユニフォームよりも工夫している感が出るのが良いのではないだろうか。

マスクという必須な道具に運用を1つ加えることで改善が行える良い事例である。

イベントにおける列管理

当時読んで印象的だった記事↓から行列の管理について考える。

先着順で整理券を配るとその整理券を求めて徹夜する人が出てきてしまい、そうならないように対応を警察から求められたときの列のさばき方について書いてある。

詳しくは記事を参照してもらうとして、以下が印象的だった。

「行列管理やイベントで最も重要なことは、単純でわかりやすいルールを視覚的に内容的にも明確に発信すること」

人間の心理的にも順番をシビアに守りたいのは100番程度までということが経験でわかりました。

いくら完成度の高いルールでも参加者が理解できない、もしくは参加者同士で共有できていなければ何の意味もなさないのです。

徹夜で並ぶという、“集団になったときに周囲への影響が大きく出てしまうが自分一人が抜けただけでは解決しない問題”に対して、共有しやすい・わかりやすいルールを周知して、守るものを明確にすることで対応する。ルールの厳密さより守りやすさを優先して考えているのが現場の知という感じがあってとても良い。

管理が崩壊する流れとして、いくつか店舗やイベントでの例が提示されている。

数に押し切られた店舗側の人間は、相手のルール違反を容認した上で、さらに自分たちの不備さえ認めさせられる事態に陥ります。最悪の場合、ルールを守った人間すら敵に回してしまいます。

もらえなかった人間が一斉に運営側の準備不足を声高に叫び始めたことでルールと正義が逆転します。*1

徹夜を禁止していたにもかかわらず、徹夜で並んだ人間達から優先してしかも時間を繰上げてまで販売を開始してしまったのです。
当然ルールを守った人間からは不満が噴出。その数があまりにも圧倒的だったため現場はパニック状態となり、そこに加えて警察からの中止命令。*2

ルールを守っていない人も自分の行動を当たり前に正当化する、それを認めてしまうとルールを守っていた人たちまでも運営の敵になってしまい収集がつかなくなる、という流れはどの例にも当てはまりそう。

 

かなり古い(2012年)が、東京駅でのプロジェクションマッピングイベントでの例。

当初の予定を30分繰り上げて開始したが、このイベントのために用意された観客席では収容することができず、隣接するビルや道路にも人があふれたため、危険と判断とした警察側から主催者に対して中止を勧告。2回目の上映が終了した時点で中止となった。

前日に地上波で紹介されたこともあり人が殺到。事前の来場予想が甘かったのか警察から中止を勧告されてしまった。

このイベントは同年12月にも行われており、12月21日から28日にかけてプロジェクションマッピングする予定だったが、24日以降は中止している。23日も初回のみでそれ以降は中止になっていた。

当時のツイートからも分かる通り、駅構内もかなりの混雑になってしまっていることが分かる。

東京駅のイベントは、なぜかこの2回の失敗の反省を活かせておらず、2014年の東京駅開業100年を記念したSuicaの販売でもやらかしている。

JR東は、記念Suicaの発売を知らせるポスターに「前日から列にお並び頂くことはできません」と告知しましたが、実際は徹夜組も多くいました。20日未明には希望者が約1500人に急増。JR東東京支社の広報担当者は「収拾がつかず、(列に並ぶのを)断れるような状況ではなかった」と話しています。

まさに冒頭の記事で触れられたアンチパターンの通りになってしまっている。

 

こういったトラブルは規模はさまざまではあるが起きている。

これは2015年の例↑。来場予想の見誤りとイベント運営の経験不足が指摘されている。東京駅の限定Suicaもそうだが、こういった限定アイテムは並ぶコストを度外視する人が多く、当日のさばきで対応するのはそもそも無理がありそう。

 

コロナ禍を経てこちらは2022年の例↓。

実際に現地に行った様子がレポートされていて、再発防止策まで提案されていて読み応えのある記事になっている。

限定アイテムの配布数、条件、その時点での状況の共有がうまくされておらず、状況が分からないユーザーが押し寄せてしまい、対応が後手後手に回ってしまっている。さらには警察への事前共有もされていない様子で、運営が混乱していたことが分かる。

 


 

偏ったサンプリングではあるが、見る限り「限定アイテムの先着順での販売(配布)」は都市部では成立しないと思った方が良さそう。そもそも並ぶための場所が少なく、交通量も多い場所だと事故の危険も高まる。警備したところで人が多すぎるとはけてもらう場所がないような状態になってしまう。コロナのこともあるし、基本的には事前予約や抽選が必須になるだろう。

中止されたイベントについて悪く書いているが、中止程度で済めば事前に危険を回避している点で良いとも言える。判断が遅くなり混雑が過ぎると事故が起こっていまう。日本*3や韓国*4でも痛ましい事件があったが、それについてはまた別途考えることにする。

群衆をコントロールするシステムの構築は、相応の繊細さと胆力の必要な作業だ。上手にやっているところ含めて今後も事例があれば集めたい。

 

*1:「某ソーシャルゲームのイベント」とあり、おそらく後述するモンストの件

*2:「某駅100周年イベント」とあり、おそらく後述する東京駅開業100年を記念したSuicaの販売の件

*3:明石花火大会歩道橋事故 - Wikipedia

*4:ソウル梨泰院雑踏事故 - Wikipedia

システムとその運用について

システムやその運用方法について考えたいと思いながら、そういったことに関連しそうだなと思った記事をクリッピングしては放置する、を繰り返していた。

もともと人の行動を制限したり誘発したりするルールや設備、振る舞いに関心があって、アフォーダンスのようなものについていろいろ考えたいと思っていた。

そんな中、コロナ禍を経てぐだついた東京2020オリンピック・パラリンピック(2021年開催)の様子を見て、一見完成されているように見える世間のさまざまなシステムは、意外と素朴な管理や運用で回っているのではないかと思うようになった。(人によっては意外でもなんでもないかもしれない。)

自分が社会に関わるのりしろのようなものはもう無いのではないか、思いつくものはすべてこの世にあるんじゃないかと思い始めていた中で、「なんだ、やれることはまだあるのか」と思うようになった。

社会的な話題に触れてしまったけど、ここでいうシステムというのは難しい業務を簡易化する、とかそういうことばかりではなく、玄関のドアにゴミ収集の日の一覧を貼っておけば朝出るときに思い出せるとか、防災頭巾を椅子の背もたれにかけておけばなくしにくいし有事の際にすぐ使えるとか、そういうちょっとした工夫のことのつもりで書いている。

特別なきっかけがあったわけではないんだけど、そういう意識がぼんやりとずっとあって、なにか言葉にして残しておかないとなと、新年のフレッシュな気持ちを頼りに重い腰を上げた。